fc2ブログ

YAMAHA Dynamic Guitar No.10A

2011.05.04.Wed.00:54
Dynamic Guitar とは



1951年、ガットギターを進化させ、より豊かな音量と美しい音色を求めて伊藤翁介氏がギターの表面振動板の共鳴理論を確立、特許を取得しました。ヤマハがこれを採用しダイナミックギター(ダイナミックブレーシング)として張力の強いスチール弦に耐えられるように設計制作された。ってな感じだと思います。

1952年に試作を終えた後、市販品として量産されたようです。ヤマハのHPではNo.1の発売が1961年12月となっておりますが、金ラベル、黒ラベルのダイナミックギターは50年代に制作されたモデルって事です。その中でも 0フレット仕様は初期の仕様だそうです。60年代は赤枠ラベルになりますがこの辺の正確な資料は無いようで、あくまでも大雑把な流れとしてとらえて下さいませ。

今回入手しました No.10A はヤマハのHPによれば1961年12月発売になっておりますがこれも正確には分かりません。1963年頃からヘッドにJISマークが入るようになります。日本工業規格(JIS) S8510というギターの項目が制定されたのが1962年3月ですので採用される前のモデルって事は確かですね。ギターの工業規格ってものは一体どんなものなのか知りたいのですが・・・1998年7月に廃止されております。



1964年のカタログに掲載されている YAMAHA Dynamic Guitar の特徴です。

1、音量がすばらしく豊かで しかも 音がたいへんよく持続しますから 独奏に好適です。
2、音にむらがありません 低音部が強大で 高音部まで 平均してよく鳴ります。
3、音色が まろやかで美しく澄んでいるので各パートがはっきり聞こえますから 合奏にすばらしい魅力を発揮します。
4、和音(コード) がよく溶け合って 伴奏にも美しい効果が得られます。
5、音に指向性があるので ステージでの演奏でも 遠くまでよく音が透ります。
6、ハーモニック音 その他の特殊音が出ます。
7、精選された材料によって制作され 持つよろこびも楽しめる優美な仕上げです。
8、弦は スティール ナイロン ガットのいずれを用いても良い結果が得られます。

同カタログの モデル No.10 についてです。

表甲:良質エゾ松
裏甲及側胴:楓
表甲及響孔周囲:セルロイド像眼
指板:柞
フレット:真鍮
ポジションマーク:丸貝
ダイナミック弦
暗赤色周囲ぼかし塗 前面暗赤色塗の2種類

ダイナミック独特の構造によって低音が鳴りにくいというギター共通のナヤミを解決。
まろやかな音色と格安のお値段が自慢のポピュラーギターのホープです。

価格:¥3800



ダイナミックの特徴として良く書かれてますが、結構その通りだと思います。低音が鳴るギターはなかなかありませんからねぇ。弾いてて気持ちが良いです。その他の特殊音ってどんな音なのでしょうか?ダイナミック弦ってやつが張ってあったようですが、いったいどの様な弦だったのか気になります。

ボディは全て単板ですがカタログを見てますと No.10 は良質エゾ松とあります。No.20 は上等エゾ松そして最高級品は特選エゾ松ですわ。良質エゾ松が50年後これだけ鳴るのなら特選はどないやねん?と、その違いを聴き比べたいとも思ってしまいますなぁ。

最初の No.1モデルが 途中で No.10 となったようで、ラベルの No.1 の後ろに「0」のハンコを押した No.10 も存在致します。ちなみに、No.2 → No.20 もあるようです。No.1 もそうですが塗装(色)の違いでNo.10・10A・10B と3種類あります。低価格の普及モデルとしてバリエーションを付けたのでしょうか?

これも普及モデルの為かは分かりませんが、指板の幅が狭いモデルが No.10、No.15 です。指板幅(上駒部/胴接合部): 44/57 とフォーク・ギター並の幅でありまして幅広い層に受け入れられる仕様にしているような感じがします。ただ、ネックはぶっ太いので握った感じはバットを握ってる様ですわ。ロッドが入ってないのでスチールを張った場合の強度を太さでカバーするためでしょうかねぇ~。

スライド用として使用する分にはネックの太さはあまり気になりませんが、フラットに並んだ弦の上を滑らすと余計な弦に触ってしまうのであります。まぁ、慣れでしょうけど。金属のスライドバーより分厚い陶器製かガラスのバーの方が雰囲気が出るんじゃないかと思います。 

何とも怪しげなギターではありますが、50年経った今、捨て値のような値段でこの音を弾く事が出来るってのはあまりにも贅沢過ぎる話ですなぁ。



- 余談 -

ダイナミックギターがヤマハのフォークギターの前身であった様に書かれているものがありますが、たぶん違うんじゃないかと思うわけです。ガットギターを進化させたのがダイナミックギターであって基本的にはガットギターです。

ヤマハがフォークギターを開発する100年前には既にXブレーシングという形を完成させ、フラット・トップ・ギターを世に知らしめた C.F.Martin & Co があった訳で他社は挙って模範にしたわけですな。

ヤマハの開発陣も必死でマーチンのギターを研究したと思います。それを踏まえたうえでヤマハ独特の音が生まれたと思います。その中にはダイナミックブレーシングなどの表面振動板の共鳴理論なんかも含まれてるんじゃないかとは思いますが・・・・。 

とまぁ、このように考えております。




スポンサーサイト



コメント

管理者にだけ表示を許可する