fc2ブログ

白人労働者階層 その2

2017.04.28.Fri.00:10
以前、アメリカ大統領選挙時にも掲載(こちら)致しましたが、なかなか日本では解り難い人種差別や階級問題でございます。 特に "白人労働階級" につきましては、これまで表立って取り上げられる事が少なかった事柄です。

トランプ大統領になってから色々と取り上げられておりますが、白人労働階級とブルースは切っても切れない関係がありますので、ブルース研究の為に少しでも知るべきではないかと思っております。 今回も 「東洋経済ONLINE」 に興味深い記事があったので転載致します。


『トランプを支持する「負け犬白人」たちの正体』
黒人・ラテン系移民より将来に絶望している
J.D.ヴァンス :投資会社社長 2017年04月27日東洋経済ONLINE

「黒人」「アジア人」「白人」――。民族意識の強いアメリカ社会では、肌の色の違いに基づく分類が大きな意味を持つ。

ただ、白人のすべてが 「WASP(ホワイト・アングロサクソン・プロテスタント)」 であるわけではない。 18世紀に移民としてやってきたスコッツ=アイリッシュ系の白人たちは、歴史的に貧困の中に生きてきた労働者階級だ。 奴隷経済時代には日雇い労働者として働き、近年は機械工や工場労働者として生計を立てている。

彼らは、アメリカ社会で“ヒルビリー (田舎者)”と呼ばれている。 こうした白人労働者たちの存在を無視して、トランプ大統領誕生の背景を読み解くことはできない。
アメリカの繁栄から取り残されたヒルビリーの実態とは?『ヒルビリー・エレジー』著者であり、自身もヒルビリー出身ながらイェール大学のロースクールを修了し、現在はシリコンバレーで投資会社の社長を務めるJ.D.ヴァンス氏が語る。

17042801.jpg


アメリカでもっとも厭世的なのは「白人労働者階層」

ケンタッキー州東部の丘陵地帯出身の私の家族は、自らを「ヒルビリー」と呼んでいる。 私の故郷は、今まさに貧困のただ中にある。 社会階層間の移動が少ないことに加え、はびこる貧困や薬物依存症などの中で、ここに暮らす白人労働者階層の将来はどこよりも見えにくい。

さまざまな世論調査の結果、アメリカで最も厭世(えんせい)的傾向にある社会集団は、ラテン系移民でも黒人たちでもなく、白人労働者階層だといわれる。

ヒルビリーは、かつてないほど社会的に孤立していて、その状態を次の世代に引き継ごうとしている。 子どもたちが成功するために必要な社会的サポートは軽視され、労働者たちはよりよい機会を求めて新天地を切り開くことをあきらめてしまっている。

こうしたわれわれの現状を語ると、必ずやこう言う人がいる。 「彼らが幸福を感じなくなっているのは、経済的機会がないからだ。仕事に就くチャンスがありさえすれば、生活状態も改善するはずだ」。

私も若い頃は、このように考えていた、いや、こう信じ込もうとしていた時期がある。だが、実際の経済的不安定さに直面してみると、この主張が必ずしも十分でないことがわかるはずだ。

私はイェール大学のロースクールに入学する前の夏、大学のあるコネチカット州ニューヘイブンに引っ越す費用を工面するために、仕事を探していた。 すると、床タイルを扱う中規模の会社を経営する地元の知り合いが、うちで働かないかと誘ってくれた。

床タイルは驚くほど重い。 1枚で1.5キログラムから3キログラム近くもの重さがあり、8枚から12枚のタイルが1つの箱に梱包されている。 私の仕事は、輸送用のパレットにタイルを載せ、出荷の準備をすること。 簡単な仕事とはいえないが、とにかく稼がなければならない私にとって、時給13ドルは魅力的だった。 すぐに心を決め、時間外シフトをできるだけ増やしてもらい、可能なかぎり長時間働くことにした。

10人ほどの作業員がいて、多くはそこで何年も働いていた。 そのひとり、飛行機のパイロットを夢見る青年は、このタイル会社以外でも、フルタイムの仕事に就いていた。時給13ドルなら、独り身の青年が地方の町(それなりのアパートが500ドルで借りられる)で暮らすには、十分な稼ぎになる。

しかも、この会社では定期的に昇給がある。 景気が低迷するなかでも、ここで何年か働き続ければ、少なくとも時給16ドルは稼げるようになる。 年収にして3万2000ドル、つまり、1家族が最低限度の生活を維持できる収入を得られるのである。

17042802.jpg
Photo by Shelby Lee Adams


仕事はあるのに、勤勉に働かない人々

ところがその会社は、比較的安定した賃金を約束していたにもかかわらず、倉庫係として長期で働いてくれる人材を確保できないでいた。 私が辞めるときには、ほかにも3人の青年が倉庫係として働いていたが、26歳の私が飛び抜けて年長だった。

ある作業員(ここでは仮にボブと呼ぶ)は、私より数カ月早く倉庫係として採用されていた。 19歳のボブには妊娠中のガールフレンドがいた。 上司は親切にも、ボブのガールフレンドを事務員として迎え入れ、電話の応対を任せることにした。

ところが、ボブとガールフレンドは、まったくひどい働き手だった。 ガールフレンドのほうは、3日に1度の割合で無断欠勤。 「休むときは事前に連絡するように」 と繰り返し注意され、数カ月で辞めていった。

ボブも欠勤の常習者で、1週間に1度は姿を見せない。 しかも、いつも遅刻ばかり。 そのうえ、1日に3回も4回もトイレにこもり、一度こもると30分は戻らない。 その態度があまりに目に余ったので、もうひとりの作業員と私は、よくからかっていた。 ボブがトイレに向かうと、ストップウォッチをセットし、経過時間を確認しては 「35分!」「45分!」「1時間!」 と、倉庫じゅうに響く声で叫んだのである。

結局、ボブも解雇されることになった。 それを知ったボブは、上司の元に走り、「クビだって? おなかの大きいガールフレンドがいると知っているのに?」 と詰め寄った。

だが、辞めていくのはボブだけではなかった。 私が働いていた短い期間に、少なくともさらに2人(そのうちの1人はボブのいとこ)が、辞めさせられるか、自分から辞めていった。

機会の平等について語るときには、ここまでに書いてきたような事実を忘れてはならない。 ノーベル賞を受賞した経済学者たちは、中西部工業地帯の衰退や、白人労働者階層の働き手の減少を心配する。 製造業の拠点が海外に移り、大学を卒業していない若者が中流層の仕事に就くことは難しい、というのが経済学者たちの主張だ。確かにそのとおり。 私も同じ心配をしている。

17042803.jpg
Photo by Shelby Lee Adams


社会の衰退を助長する文化

だが、私が皆に知ってほしいのは、それとは別の話である。 産業経済が落ち込むなか、現実の生活で人々に何が起こっているのか。 最悪の状況に、人々はどのように反応しているのか。 社会の衰退を食い止めるのではなく、それをますます助長する文化とはどのようなものなのか。そうしたことである。

タイル会社の倉庫で私が目にした問題は、マクロ経済の動向や国家の政策の問題よりも、はるかに根が深い。 あまりにも多くの若者が、重労働から逃れようとしている。 よい仕事であっても、長続きしない。 支えるべき結婚相手がいたり、子どもができたり、働くべき理由がある若者であっても、条件のよい健康保険付きの仕事を簡単に捨ててしまう。

さらに問題なのは、そんな状況に自分を追い込みながらも、周囲の人がなんとかしてくれるべきだと考えている点だ。 つまり、自分の人生なのに、自分ではどうにもならないと考え、なんでも他人のせいにしようとする。そうした姿勢は、現在のアメリカの経済的展望とは別個の問題だといえる。

『ヒルビリー・エレジー』 で焦点をあてたのは、私がよく知っている人たち、すなわちアパラチアに縁のある白人労働者階層である。 しかし私は、そうした人たちのほうが同情に値すると主張したいわけではない。 黒人よりも白人のほうが強い不満を抱いている理由を論じるつもりもない。 読者の皆さんには、人種というレンズを通した歪んだ見方をするのではなく、「貧しい人たちにとって、社会階層や家族がどのような影響を与えるのか」 を理解してほしい。

多くのニュース解説者や評論家にとっては、「ウェルフェアクイーン(福祉の女王)」という用語は、「公的扶助を受けながらも、怠惰な生活をする黒人女性(母親)」という偏ったイメージを呼び起こす。 だが、読者の皆さんはそうした幻影と私の議論とはなんの関係もないことにすぐに気づくだろう。 私は実際に、多くのウェルフェアクイーンを知っている。 隣人にも何人かいるが、全員が白人なのだ。







スポンサーサイト



コメント

管理者にだけ表示を許可する