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白人労働階級

2016.11.07.Mon.00:04
アメリカ大統領選挙もそろそろ決着がつくようでございますが、投票は今月8日(火)。 開票は日本時間9日(水)午前8時からとなっております。

ひとかたならぬ関係も無しに非ずやって感じで、アメリカの歴史における白人労働階級との関連性、についての記事がありましたので掲載しておきたいと思います。(少し長いですが・・) アメリカの音楽、そしてブルースを研究する上でアイルランド系移民の歴史、影響は重要なのでございます。


「Newsweek ニューズウィーク日本版」 に掲載されている渡辺由佳里 さんのコラムより。

トランプに熱狂する白人労働階級「ヒルビリー」の真実 (2016年11月04日)

<知識層からときに「白いゴミ」とまで蔑まれる白人の労働者階級。 貧困と無教養を世代を越えて引き継ぐ彼らに、今回の選挙で 「声とプライド」 を与えたのがトランプだった>

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 無名の作家が書いたメモワール 『Hillbilly Elegy』 が、静かにアメリカのベストセラーになっている。

 著者のJ.D.ヴァンスは、由緒あるイェール大学ロースクールを修了し、サンフランシスコのITベンチャー企業の社長として働いている。 よく見るタイプのエリートの半生記がなぜこれだけ注目されるのかというと、ヴァンスの生い立ちが普通ではないからだ。

 ヴァンスの故郷ミドルタウンは、AKスチールという鉄鋼メーカーの本拠地として知られるオハイオ州南部の地方都市だ。 かつて有力鉄鋼メーカーだったアームコ社の苦難を、川崎製鉄が資本提携という形で救ったのがAKスチールだが、グローバル時代のアメリカでは、ほかの製造業と同様に急速に衰退してしまった。 失業、貧困、離婚、家庭内暴力、ドラッグが蔓延するヴァンスの故郷の高校は州内でも最低の教育レベルで、2割は卒業できない。大学に進学するのはごく少数で、トップの成績でも他の州の大学に行くという発想などない。 大きな夢の限界はオハイオ州立大学だ。

 ヴァンスは、そのミドルタウンの中でも貧しく苦しい家庭環境で育った。 両親は物心ついたときに離婚し、看護師の母親は新しい恋人を作っては別れ、そのたびに鬱やドラッグ依存症を繰り返す。 そして、抜き打ちのドラッグの尿検査があって困ると、当然の権利のように息子に尿を要求する。それを拒否すれば、泣き落としや罪悪感に訴えかけてくる。 母親代わりの祖母がヴァンスの唯一の拠り所だったが、十代で妊娠してケンタッキーから駆け落ちしてきた彼女も、貧困、家庭内暴力、アルコール依存症といった環境しか知らない。 小説ではないかと思うほど、波乱に満ちた家族の物語だ。

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Photo by Shelby Lee Adams

 こんな環境で高校をドロップアウトしかけていたヴァンスが、イェール大学のロースクールに行き、全米のトップ1%の富裕層にたどり着いたのだ。 この奇跡的な人生にも興味があるが、ベストセラーになった理由はそこではない。

 ヴァンスが 「Hillbilly (ヒルビリー)」 と呼ぶ故郷の人々は、トランプのもっとも強い支持基盤と重なるからだ。 多くの知識人が誤解してきた 「アメリカの労働者階級の白人」 を、これほど鮮やかに説明する本は他にはないと言われている。

 タイトルになっている 「ヒルビリー」 とは田舎者の蔑称だが、ここでは特に、アイルランドのアルスター地方から、おもにアパラチア山脈周辺のケンタッキー州やウエストバージニア州に住み着いた 「スコットアイリッシュ(アメリカ独自の表現)」 のことである。

 ヴァンスは彼らのことをこう説明する。

「貧困は家族の伝統だ。祖先は南部の奴隷経済時代には(オーナーではなく)日雇い労働者で、次世代は小作人、その後は炭鉱夫、機械工、工場労働者になった。 アメリカ人は彼らのことを、ヒルビリー (田舎者)、レッドネック (無学の白人労働者)、ホワイトトラッシュ (白いゴミ) と呼ぶ。でも、私にとって、彼らは隣人であり、友だちであり、家族である」

 つまり、「アメリカの繁栄から取り残された白人」だ。

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Photo by Shelby Lee Adams

「アメリカ人の中で、労働者階級の白人ほど悲観的なグループはない」 とヴァンスは言う。黒人、ヒスパニック、大卒の白人、すべてのグループにおいて、過半数が 「自分の子供は自分より経済的に成功する」 と次世代に期待している。ところが、労働者階級の白人ではその割合は44%しかない。「親の世代より経済的に成功していない」 と答えた割合が42%だから、将来への悲観も理解できる。

 悲観的なヒルビリーたちは、高等教育を得たエリートに敵意と懐疑心を持っている。 ヴァンスの父親は、イェール大学ロースクールへの合格を知らせると、 「(願書で)黒人かリベラルのふりをしたのか?」 と尋ねた。 ヒルビリーにとって、リベラルの民主党が 「ディバーシティ(多様性)」 という言葉で守り、優遇するのは、黒人や移民だけ。知識人は自分たちを 「白いゴミ」 と呼んでバカにする鼻持ちならない気取り屋で、例え自分たちが受けている福祉を守ってくれていたとしても、その事実を受け入れるつもりも、支持するつもりもない。

 彼らは 「職さえあれば、ほかの状況も向上する。仕事がないのが悪い」 という言い訳をする。

 そんなヒルビリーに、声とプライドを与えたのがドナルド・トランプだ。

 トランプの集会に行くと、アジア系の私が恐怖心を覚えるほど白人ばかりだ。だが、列に並んでいると、意外なことに気づく。

 みな、楽しそうなのだ。

 トランプのTシャツ、帽子、バッジやスカーフを身に着けて、おしゃべりをしながら待つ支持者の列は、ロックコンサートやスポーツ観戦の列によく似ている。

 彼らは、「トランプのおかげで、初めて政治に興味を抱いた」 という人たちだ。 「これまで自分たちだけが損をしているような気がしていたし、アメリカ社会にモヤモヤした不満を抱いてきたけれど、それをうまく言葉にできなかった」 という感覚を共有している。

「政治家の言うことは難しすぎてわからない」 「プロの政治家は、難しい言葉を使って自分たちを騙している」 「ばかにしているのではないか?」......。そんなモヤモヤした気持ちを抱いているときに、トランプがあらわれて、自分たちにわかる言葉でアメリカの問題を説明してくれた。そして、「悪いのは君たちではない。イスラム教徒、移民、黒人がアメリカを悪くしている。 彼らをひいきして、本当のアメリカ人をないがしろにし、不正なシステムを作ったプロの政治家やメディアが悪い」 と、堂々と 「真実」 を語ってくれたのだ。

 トランプの 「言いたいことを隠さずに語る」 ラリーに参加した人々は、大音響のロックコンサートを周囲の観客とシェアするときのような昂揚感を覚える。 ここで同じ趣味を持つ仲間もできる。 しかも、このロックコンサートは無料だ。

「トランプの支持者は暴力的」 というイメージがあるが、それは外部の人間に向けての攻撃性であり、仲間同士ではとてもフレンドリーだ。

 この雰囲気は、スポーツ観戦とも似ている。特に 「チームびいき」 の心境が。 レッドソックスのファンは、自分のチームをとことん愛し、ニューヨークヤンキースとそのファンに強い敵意を抱く。 この感情に理屈はない。

トランプの支持者に取材していた筆者は、ヴァンスの本を読んでいて 「まったく同じ人々だ」 と感じた。 ヴァンスが説明するアパラチア山脈のヒルビリーに限らず、白人が多い田舎町では同じように 「トランプ現象」 が起こっている。

 ヴァンスは家族や隣人として彼らを愛している。だが、「職さえあれば、ほかの状況も向上する。仕事がないのが悪い」 という彼らの言い訳は否定する。 社会や政府の責任にするムーブメントにも批判的だ。

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Photo by Shelby Lee Adams

 困難に直面したときのヒルビリーの典型的な対応は、怒る、大声で怒鳴る、他人のせいにする、困難から逃避する、というものだ。 自分も同じような対応をしてきたヴァンスが根こそぎ変わったのは、海兵隊に入隊してからだった。 そこで、ハードワークと最後までやり抜くことを学び、それを達成することで自尊心を培った。 そして、ロースクールでの資金を得るためにアルバイトしているときに、職を与えられても努力しない白人労働者の現実も知った。 遅刻と欠勤を繰り返し、解雇されたら怒鳴り込む。 隣人たちは、教育でも医療でも政府の援助を受けずには自立できないのに、それを与える者たちに牙をむく。 そして、ドラッグのための金を得るためなら、家族や隣人から平気で盗む。

 そうなってしまったのは、子供のころから努力の仕方を教えてくれる人物が家庭にいないからだ。

 ヴァンスはこう言う。 「僕のような子供が直面するのが暗い将来だというのは統計が示している。幸運であれば福祉の世話になるのを避けられるが、不運ならアメリカの多くの田舎町で起こっているように、ヘロインの過剰摂取で死ぬ」 と。 彼がアイビーリーグのロースクールに行って弁護士になれたのは、ずば抜けた天才だったからではない。 幸運にも、宿題を強要する母代りの祖母や、支え合う人間関係について身をもって教えたロースクールのガールフレンドなど、愛情を持って支えてくれた人たちがいたからだ。ヴァンスのように幸運でなかった者は、「努力はしないが、バカにはされたくない」 という歪んだプライドを、無教養、貧困とともに親から受け継ぐ。

 この問題を、どう解決すればいいのか?

 ヴァンスは、ヒルビリーの子供たちに、行き場や自分のようなチャンスを与えるべきだと考える。そして、悪循環を断ち切ることだ。だが、その方法については 「僕にも答えはわからない」 と言う。

「だが、まずオバマやブッシュ、顔のない企業のせいにするのをやめなければならない。そして、どうすれば改善するのか、自問するところから始めるべきだ」

 これは、ヒルビリーだけではない。私たちもそうしなければならないだろう。




渡辺由佳里
兵庫県出身。1995年から現在までアメリカのボストン近郊でビジネス講演者の夫David Meerman Scottと二人暮らし。
職歴は、助産師、日本語学校のコーディネーター、広告業、外資系医療製品製造会社勤務などさまざまで、小説を2作刊行した後、現在はエッセイ執筆、翻訳、洋書の紹介、夫の会社の雑用重役 (ちゃんとお給料をもらう仕事)などをしています。
通常は、エッセイを書いたり、翻訳をしたり、洋書のご紹介をしたり、日本の子供に洋書の読書指導をしたりしています。
http://www.yukariwatanabe.com/


参考資料 
「忘れられた白人奴隷」
http://bluesohashi.blog.fc2.com/blog-entry-1007.html









国立アフリカ系米国人歴史文化博物館

2016.10.23.Sun.00:18
ひと月遅れのネタで申し訳ありませんが、先月(2016年9月24日)に 「国立アフリカ系米国人歴史文化博物館(National Museum of African American History and Culture)」 が首都ワシントンに着工から4年半で完成致しました。

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博物館のあるナショナル・モールという地区はかつて黒人人身売買が行われた地で、公民権運動の舞台になった場所でもあります。 博物館にはキング牧師をはじめ公民権運動の記録や19世紀の奴隷解放運動の資料も展示し、収蔵品は3万7千点におよぶそうです。

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開館記念式典に出席したバラク・オバマ(Barack Obama)米大統領は、「アフリカ系米国人の歴史は、米国自体の歴史から切り離されるものではない。それは米国史の裏にあるものではなく、米国の物語そのものだ」 とスピーチ致しました。

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アメリカも少しづつは変わって行くのでしょうか? 今回の大統領選挙を見ていると何も変わってない様にも感じますが・・・。 ともあれ、ワシントンに行く機会 (行く機会があるのか?) があれば、是非とも立ち寄りたい博物館ですが、日本語で説明してくれる学芸員が居て欲しいなぁ。 (´Д`)






ブルースにおける愛

2015.12.14.Mon.00:19
雑記帳を捲っていたら出てきた文章でございますが、ブルースとはなんやろな~と、以前あれこれ探っていた時にメモってたみたいです。 なのでどこから引っぱってきたか分からないけど掲載しときます。 (´Д`)

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「ブルースにおける愛」 についての歌詞とブルースマンの言葉ですが、このリアリティこそがブルースたるものだと思って書き留めてたようです。 男と女がいる限り人種なども関係なく不滅のテーマとも言えますな・・。


You can always tell when your woman got another man,
You can always tell when your woman got another man,
Your meals ain't regular and your house ain't never clean・・・

何時でも分かるもんさ 自分の女に 他の男が出来た時は
何時でも分かるもんさ 自分の女に 他の男が出来た時は
三度の飯も滞り 家はどうにも片付かぬ・・


・・・the achin' heart disease,
Like consumption,killing me by degrees.

・・疼く心臓病だ 結核のように
じわじわと俺を殺す

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ブルースでは愛の希望よりも、苦悩が何度も繰り返されるのだ。
愛ゆえの不幸は、ブルースの執拗なテーマである為、ブルースの定義の一部をなしている。

「そう、ブルースは殆ど女が原因さ。 たくさんの男達がそれぞれ女に惚れていて、本気になっているんだ。 ところが、女は不誠実で、男が心底から惚れていても、他の男に心惹かれて去って行くんだ。 残された男は泣いたりわめいたりするしかないのさ」





忘れられた白人奴隷

2015.10.15.Thu.00:37
ブルースという音楽をあれこれ調べていると、何やかんやと出てきますね・・。 アフリカから連れて来られた黒人より前に、アイルランド人が奴隷としてアメリカに連れて来られていたそうです。 奴隷制というものは古代から行われていた事であるし、現代でも行われている事でもあるので、色々と思う事などありますがコメントは控えさせていただきます・・・。 m(__)m


「アメリカで最初の奴隷はアイルランド人だった」

たくさんの人達がが、その性別、年齢にかかわらず、奴隷として、アメリカにつれてこられました。 人間としての名誉、権利 ・ 自由を認められず、他人の所有物として取り扱われる。 所有者の全的支配に服し、労働を強制され、譲渡 ・ 売買の対象とされ、命令に従わない時は、ひどい罰をうける。 生きたまま火あぶりにされ、従わないものへのいましめとして、その首は通りに置かれました。

この残酷な事実を、全てここで説明する必要はないですよね。 アフリカ奴隷貿易の残虐行為は、みなさん衆知の事実です。 ここではアフリカの奴隷制度についてお話ししたいのではありません。

ある文献によると、ジェームス2世とチャールズ1世がアイルランド人の奴隷を主導していたと言われています。 イギリスの歴史上、有名なオリバー ・ クロムウェルも、この非人道的な行為を助長していました。

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ジェームズ二世

アイルランド人奴隷貿易は、ジェームズ2世が30,000人の牢獄者をアメリカに奴隷として売ったことが始まりです。 その後、アイルランドの囚人達は、海外在住のイギリス人入植者へ売られるようになり、1600年の中ごろには、アンティグアやモンセラットの奴隷のほとんどはアイルランド人となっていました。 当時、モンセラットの人口の70%がアイルランド人を占めたほどです。

このように、アイルランドは、すぐにイギリスの商人達にとって、もっとも大きな人間収容所となっていました。 奴隷売買当初、アメリカへの奴隷の半分以上が実は白人でした。

1641年から1652年にかけて、500,000人以上のアイルランド人がイギリス人によって殺され、300,000人が奴隷として売られました。 これにより、たったの10年間で、アイルランドの人口は約1,500,000から600,000へと減少しました。 家族は引き裂かれ、イギリス人はアイルランド人の父親が、妻や子供たちを連れて、大西洋を越えることを決して許しませんでした。 これは結果として、ホームレスの女性や子供を増やすこととなり、イギリスは、その解決策として、彼女らを奴隷として、競売に賭けるなどしていました。

1650年代になると、100,000人以上の10~14歳のアイルランドの子供達が、両親から引き離され、東インド諸島の西部、ヴァージニア、ニューイングランドへ奴隷として売られていきました。 この50年代には、約52,000人のアイルランド人 (ほとんどが女性や子供達) がバルバドスとバージニアに売られていきました。 また、更なる30,000人ものアイルランド人が高額落札者によって、輸出されていきました。 1656年、クロムウェルは、2,000人のアイルランドの子供達をジャマイカへ連れて行き、イギリス入植者へ奴隷として売っています。

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今日、多くの人々が、アイルランド奴隷の事実がどういうものであったか口を閉ざしています。 ある人は、アイルランド人におこった出来事を、「年季契約奉公人」 であった、という表現をつかうかもしれません。 しかしながら、17世紀から18世紀に起こった事実のほとんどが、アイルランド人奴隷を家畜のように扱ったという、残酷な事実以外のなにものでもありません。

アフリカ奴隷貿易はちょうど同じ時期に始まりました。 その事実は、詳細に渡り、くわしく記録されています。 この記録によると、アフリカ人奴隷は、当時毛嫌いされたキリスト神学に汚染されていないということで、アイルランド人よりも高い金額で取引されており、アイルランド人奴隷よりもはるかにいい扱いだったということです。

アフリカ人奴隷は、1650年代後半、とても高価(50ポンド)なものでした。 アイルランド人奴隷はというと、5ポンド以下のとても安価に扱われていました。 もし、主人が奴隷を殴ったり、やけどを負わせたり、死に追いやったとしても、犯罪にはなりませんでした。奴隷を殺してしまうことは、その主人にとって金銭面で不利益ではありましたが、より高価なアフリカ人を殺すよりも、はるかに安いものでした。

イギリス人の主人達は、自分達の個人的な満足や大きな利益の為に、アイルランド人女性達を飼育し始めました。 また、その子供達は主人の無償の労働力となり働きました。これは、主人達にとって、大変使い勝手がよかったようで、何らかの形でアイルランド女性が自由を手に入れることができたとしても、彼女達の子供は奴隷として残されました。 結局のところ、アイルランド人の母親達は、自分達が奴隷解放されたとしても、めったに、子供を残して出ることはなく、奴隷として残っていました。

当時、イギリス人は、市場シェアを高めるために奴隷女性 (多くの場合、12歳) をよりよく利用する方法を思いつきました。 :イギリス人入植者達が、アイルランド人女性 (子供も含め) とアフリカ人男性を更なる奴隷を得る為に、飼育 (交配) し始めたのです。 この交配により生まれた、新しい奴隷 「ムラート」 はアイルランド人達よりも高値で取引されるようになりました。 また、入植者達は新しいアフリカ人奴隷を購入するよりも、ムラートを購入することで、お金を節約することができました。

このアイルランド人女性とアフリカ人男性の交配は、数十年続き、広範囲に広がっていきました。 その後、1681年、「販売目的で、アイルランド人奴隷女性とアフリカ人奴隷男性に子供をつくらせることを禁止する」 という法律が施行されましたが、それは、単に、膨大な利益を得ていた奴隷貿易会社をの収益を止める、というのが目的で施行されたものでした。

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イギリスは、この残酷なアイルランド人奴隷貿易を100年以上にわたり続けました。 記録によると、1798年のアイルランド暴動後も、何千ものアイルランド人奴隷がアメリカやオーストラリアへ売られています。

長年に渡り、アフリカ人とアイルランド人への残酷な人権侵害が行われました。 あるイギリス船では、船員たちの為の、大量の食べ物を積んでいたにも関わらず、1302人もの奴隷が大西洋に投げ出されたという記録も残っています。

ここで少し疑問がでてきます。 アイルランド人奴隷は、アフリカ人奴隷が経験したそのものと同じような、恐ろしく残酷な奴隷経験をしたのでしょうか。 また、東インド諸島西部で見られるブラウンカラーの顔の色はアフリカ人とアイルランド人の祖先の組み合わせから来ているように見えませんか。

1839年、イギリスがようやく、自身が参加していた地獄への使者という役割の終焉を決め、奴隷貿易を廃止しました。 この決議の間、海賊は奴隷貿易廃止を拒んでいましたが、新しい法律の制定は、除々に、この悪夢という名の 「アイルランドの悲劇」 を終焉へと導きました。

もし、誰か、奴隷とされていたのはアフリカ人だけであったという人がいるのであれば、それは完全に誤りです。

アイルランド人奴隷は、私達の記憶から消してはいけない、悲劇の事実です。 しかし、どこでこの事実が公表されているのでしょうか。 学校で教わりましたか。 歴史の教科書のどこにその記載があったでしょうか。 どうしてめったにこの話題に触れられないのでしょうか。

数えきれないほど多くのアイルランド人犠牲者の記憶は、誰にも知られていない私のような筆者から語られていいものなのでしょうか。 彼らの歴史はイギリス海賊が意図して、あたかも起こっていなかったことのように、完全に消しさったものなのでしょうか。

これまで、アイルランド人犠牲者の誰も、その痛々しい体験を母国に帰って語りませんでした。 彼らは時間と偏った歴史書が都合よく忘れた、失われた奴隷達なのです。


「日本人 in Blighty」 さんのブログより





ブルースとは、2

2015.10.06.Tue.00:17
神学的に考えると、黒人音楽については、黒人霊歌に啓示された事柄だけではなく、さらにそれ以上の事が語られなければならない。 確かに、大多数の黒人は、イスラエルの神が黒人の歴史に介入されて、彼らを奴隷制と抑圧から開放していたもうことを確認していた。

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だが、すべての黒人が聖書の神的約束を、黒人の実存が持つ諸矛盾への十分な答えとして受け入れることが出来たわけではない。 ある人々は、神中心の考え方を、黒人の苦難の問題に対する解決策として取り入れることを拒絶した。 むしろ彼らは、 「まったくブルーだ、みじめすぎて泣くこともできない」 と歌ったのである。

ブルースは、黒人的体験の 「世俗的」 次元を描写している。それは、 「この世的な」 歌であって、愛と性について語り、また 「わたしの厩ではねているもう一匹のラバ」 について語っている。 さらにそれには、 「黒猫の死骸」、 「麻薬患者の手」、 「わたしのあの人を盗みとろうとしている陰口たたきのおんなたち」 について語っている。 ブルースは黒人的生となまのこの世、そして極度の抑圧状況の中で生き抜こうとする底力についての歌である。



わたしが書いたこのブルース、それを私は好きなように歌おう、
わたしが書いたこのブルース、それを私は好きなように歌おう、

こんなふうに歌っているのはわたしひとりだけさ、
誓って言うが、それはほかのだれをもよろこばせはしない。



黒人霊歌とブルース―アメリカ黒人の信仰と神学 (1983年)
ジェイムズ・H.コーン (著)、 梶原 寿 (翻訳) より